STS Network Japan関東学生・若手研究発表会で発表してきました

  • 2012-03-18 23:05:08
修士課程二年の加瀬です。
3月17日(土)に早稲田大学で開催されたSTS Network Japan関東学生・若手研究発表会にて修士論文の内容を発表いたしました。

本発表会は、科学技術社会論を扱う研究者のネットワークであるSTS Network Japanにより主催されています。なかなか発表する機会のない学生・若手が学会よりも気軽に研究発表を行い、普段のゼミとは異なるメンバーと議論を行うことによって、より研究を進めやすくしようという主旨の集まりだそうです。既に関西で行われているそうなのですが、関東では第一回目の集まりとなりました。

院生6名、若手1名が発表を行い、佐倉研からは私加瀬と修士一年の犬塚が発表者として参加しました。

全体的な印象としては、フィールドワークから哲学的考察、言説分析、歴史研究、計量分析、内容分析など、科学技術社会論に用いられる手法が質的・量的ともにバランスよく集まり、方法論のショーケースのような贅沢な会となっていました。

私は「社会に流通する科学言説に対する科学者のふるまいの分析」というタイトルで、科学者が社会とどのように関われば良いのかを考えるための基礎資料として、質的調査(レトリック分析とインタビュー調査)を行いました。

社会に流通する科学言説は科学的に不正確であり疑似科学的である、と科学者により批判されることがあります。このような科学言説は人々の文化の一形態であるため、科学者が批判するべきではない、という見方がある一方で、重大な実害を及ぼすような言説もあり、そのような場合、科学者の助言が大いに生きることがあります。科学者がこのような「科学のようで科学ではない」科学言説とどう付き合えば良いかを検討する必要があると考えられます。

そこで本研究では構築主義的アプローチに基づき、このような社会に流通する科学言説、すなわち人々の生活により近い所に存在する科学知の、どのような要素をもって「問題」であると科学者がみなしているか(問題を構築しているか)、を明らかにし、それを踏まえた上で、「科学」ではない科学言説と科学者が向き合う際にどのような点に留意すればよりよい関係を構築できるかを検討することを目的としました。本研究では「脳科学ブーム」の代表的存在として2000年代中盤より幅広い層に流行し、現在は一般名詞として定着した「脳力トレーニング(脳トレ)」と、2011年の原子力発電所事故以降爆発的に社会に流通した放射性物質汚染言説に対する科学者のふるまいを対象とし、構築主義的手法で分析し、比較検討を行いました。

結果として、科学者が社会に流通する科学言説に求める要件や、社会と付き合ってゆく上でトラブルに巻き込まれないためのガイドライン的な存在の必要性とその原型などを示すことができました。

発表後の質疑応答では多くの有意義なアドバイスをいただき、大変参考になりました。特に「科学者」と日本語で言った時には自然科学者・工学者だけではなく人文・社会学者まで含めてしまう、というご指摘や、我々科学技術社会論学者も科学者に含められるのかそうではないのか、などのご質問など、大きな収穫と宿題を持って帰ってくることができました。

懇親会ではわが国の科学コミュニケーションの問題点や今後について、そして科学者の行動規範のあり方や最新の動向についてなど、非常に刺激的なディスカッションが行われ、大変勉強になりました。

このような若手にとって有意義な会がこれからも開催されてゆけばと思います。

世話役の標葉さん、コメンテーターとしてご参加下さった先生方、本当にありがとうございました。
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