- 2017-05-21 14:20:35
博士課程(国際研修員)
産業ロボットによる過去の成功的な経験に基づいて、日本は経済大国に進出し、政策立案者は過去二十数年間に国内ロボット産業のための支援環境を作るために様々な努力をした。その努力の焦点は、大学と企業と国立研究施設との間の地域内ネットワークの改善であった(Kitagawa 2008)。例えば、「現実の状況」で開発中の技術をテストするために、全国中様々な所でロボット特区が設置された。ロボット特区というのは、また、安全規制の緩和による現代ロボット技術のショーケーシング用サイトである(Weng et al. 2015)。さらに、ロボットビジネス推進協議会の補助金を割り振るために地方支局を設立することも (Wagner 2009)、さがみロボット産業特区のように市町村が作った産業クラスター事業や(Sagami Prefectural Government 2015)大阪ロボットラボラトリーのようなロボット技術の発展を支援するプロジェクトも、その努力の結果であった(Wagner 2014: 231)。
ハイテク産業は常に大きな社会的影響下で絶え間のない技術的なイノベーションを生み出し、アメリカのシリコンバレー産業クラスターの優れた成功の影響で、日本の決定者はハイテク産業と研究開発を地域に結集することを支持し始めた(Lechevalier 2014)。シリコンバレー企業の成功は、制度的環境の特徴に関連している。例えば、リベラルで進歩的な金融市場へのアクセス、互換性のある教育制度によって生み出された優秀な人材の利用可能性、補完的な国家科学技術政策によってバックアップされた官民共同研究を支援する団体の存在は、 急進的なイノベーションの出現に適切な環境である。
日本国政府の最新の政治的試みという「ロボット新戦略」は急進的なハイテクイノベーションに有益な環境を作り出すための方針であり、国内のロボット産業を支援し再編する包括的な政策行動計画である。この2015年に安倍政府が導入したこの新戦略と言えば、福島県の経済再活性化の一環として、南相馬市に新しい地域ロボットイノベーション特区も追加した。そして、新製品のショーケーシングのチャンスを増やし、安全規制を調整しながら緩和し、ものづくり(a)、サービス(b)、介護・医療(c)、インフラ・災害対応・建設(d)農林水産業・食品産業(e)の分野における目標志向型ロボット開発のための資金提供を支援するための政策である。
したがって、この研究は上記の政策戦略などを踏まえ、すでに確立された地域イノベーションクラスターやロボット特区でどのようにロボット技術の発展が行われているかをみる。さらにロボット新戦略によって強調された農業、介護、及びサービスの分野は、人間(高齢者)とロボットとの密接な相互作用が重要な特徴であることから、特に興味深い。この分野でロボテクの実施において巨大な市場規模が予測されたとしても、発展段階におけるエンジニアと潜在的なユーザーによる相互作用の欠如は弱点であり、今まで多くの製品が経済的なブレークスルーに至っていない。従って、本研究の目的は、技術開発を社会状況に統合することによってソーシャル・イノベーションに焦点を当てた進行中のプロジェクトである(Monse and Weyer 1998: 98)。技術発展を社会状況に統合するということは、例えば設計中の(潜在的な)ユーザーのフィードバックを考慮すること、また、新しい技術開発を始める前に目標グループの要求を検証することである。様々な問題が明らかであるにも関わらず、パロというシールロボットのような老人介護の分野における日本のロボット開発は国立総合研究所での調整の下行われ、世界中で大人気となった。筑波大学・山海義之教授の人間装着型ロボットスーツ「HAL」もまた、つくばモビリティロボット実験特区で考査され、つくば国際戦略総合特区の協調的な枠組みで発展を続け、今日世界中から注目と賞賛を得た(Rabe and Kohlbacher 2015)。認知症患者に対するパロの優れた治療効果も(Kawaguchi et al. 2009)、HALで練習しながら部分的に麻痺した患者はその可動性の一部を取り戻せる効果も (Hartmann 2014)、HALから派生したパワーアシストスーツを利用し、介護や空港などのような人や重い物を繰り返し持ち上げが必要な仕事の労働条件の改善する効果も(Asahi Shimbun Digital 2016)、政策によって確立された支援的イノベーション環境の成功例である。それでも、このような技術はユーザーにとって付加価値をもたらしても、主に価格の高さのために市場に予想される範囲には浸透することが難しい。さらに、例えばパロの場合、および老齢介護と育児のためのロボテクでは、人間と感情の表現をシミュレートする機械と人間のような行動との相互作用の中に含まれる欺瞞に疑問を呈する倫理的懸念が徐々に増加している(Sharkey and Sharkey 2011, 2012; Sparrow 2015; Sparrow and Sparrow 2006; Gatterer et al. 2015)。同様の不安は、ロボットスーツの例に見られるような技術の利用によってもたらされる人間の機能強化の場合にもある。
Social innovations with robotics in eldercare in Japan and Germany. Presentation given at: Japanese and German Cutting Edge Technologies for Patient Care. First NRW-Fukushima Joint Symposium on Advances in Medicine, Essen.
Rabe, Benjamin and Martin Rathmann (October 2016):
Ready for the Robot Revolution – Japan's Attempts to Solve Societal Issues by the Implementation of Advanced Robotics.
Presentation given at: Third International Conference on Universal Village 2016, Nagoya.
Rabe, Benjamin (November 2016):
The Institutional Impact of Japan’s New Robot Strategy: Technology Development in Regional Systems of Innovation.
Presentation given at: German Association for Social Science Research on Japan (VSJF) Annual Meeting 2016 – Mobility and the City of the Future - Section Meeting Technology, Duisburg.
Japans Altenpflege: Einblicke und Ausblicke in den Pflegealltag und die Technologienutzung
Kohlbacher, Florian and Benjamin Rabe (2015):
'Leading the way into the future: The development of a (lead) market for care robotics in Japan.' In: Junmo, Kim (Ed.) (2015): International Journal of Technology, Policy and Management – Special Issue on: “Aging Society and the Changing Industrial Landscape.“
Rabe, Benjamin and Florian Kohlbacher (2015):
Pflegerobotik als Innovationstechnik in alternden Gesellschaften – Eine Analyse der Einflussfaktoren auf die Entstehung eines Lead-Markets in Japan. In Asiatische Studien - Études Asiatiques 69 (2), De Gruyter, pp.321-358.
Kohlbacher, Florian and Benjamin Rabe (2015):
A FUTURE WITH CARE ROBOTICS. In: The Magazine of the British Chamber of Commerce in Japan, (Exclusive E-Bulletin Content). Online: http://bccjacumen.com/features/e-bulletin-exclusive/2015/01/a-future-with-care-robotics/, last accessed 02/14/2015.
Rabe, Benjamin and Martin Rathmann (平成28年10月):
Ready for the Robot Revolution – Japan's Attempts to Solve Societal Issues by the Implementation of Advanced Robotics.
自己紹介
ドイツ・デュースブルクにある東アジア研究所の社会学者。ドイツ研究振興協会の支援を受けて2017年3月から東京大学の情報学科に滞在し博士課程の研究を継続する。日本政府のイノベーションやロボット政策などの影響は特に興味を持っている。趣味は好きなサッカーチームを応援することである。研究概要
研究テーマ:地域イノベーション制度におけるロボット技術発展の推移産業ロボットによる過去の成功的な経験に基づいて、日本は経済大国に進出し、政策立案者は過去二十数年間に国内ロボット産業のための支援環境を作るために様々な努力をした。その努力の焦点は、大学と企業と国立研究施設との間の地域内ネットワークの改善であった(Kitagawa 2008)。例えば、「現実の状況」で開発中の技術をテストするために、全国中様々な所でロボット特区が設置された。ロボット特区というのは、また、安全規制の緩和による現代ロボット技術のショーケーシング用サイトである(Weng et al. 2015)。さらに、ロボットビジネス推進協議会の補助金を割り振るために地方支局を設立することも (Wagner 2009)、さがみロボット産業特区のように市町村が作った産業クラスター事業や(Sagami Prefectural Government 2015)大阪ロボットラボラトリーのようなロボット技術の発展を支援するプロジェクトも、その努力の結果であった(Wagner 2014: 231)。
ハイテク産業は常に大きな社会的影響下で絶え間のない技術的なイノベーションを生み出し、アメリカのシリコンバレー産業クラスターの優れた成功の影響で、日本の決定者はハイテク産業と研究開発を地域に結集することを支持し始めた(Lechevalier 2014)。シリコンバレー企業の成功は、制度的環境の特徴に関連している。例えば、リベラルで進歩的な金融市場へのアクセス、互換性のある教育制度によって生み出された優秀な人材の利用可能性、補完的な国家科学技術政策によってバックアップされた官民共同研究を支援する団体の存在は、 急進的なイノベーションの出現に適切な環境である。
日本国政府の最新の政治的試みという「ロボット新戦略」は急進的なハイテクイノベーションに有益な環境を作り出すための方針であり、国内のロボット産業を支援し再編する包括的な政策行動計画である。この2015年に安倍政府が導入したこの新戦略と言えば、福島県の経済再活性化の一環として、南相馬市に新しい地域ロボットイノベーション特区も追加した。そして、新製品のショーケーシングのチャンスを増やし、安全規制を調整しながら緩和し、ものづくり(a)、サービス(b)、介護・医療(c)、インフラ・災害対応・建設(d)農林水産業・食品産業(e)の分野における目標志向型ロボット開発のための資金提供を支援するための政策である。
したがって、この研究は上記の政策戦略などを踏まえ、すでに確立された地域イノベーションクラスターやロボット特区でどのようにロボット技術の発展が行われているかをみる。さらにロボット新戦略によって強調された農業、介護、及びサービスの分野は、人間(高齢者)とロボットとの密接な相互作用が重要な特徴であることから、特に興味深い。この分野でロボテクの実施において巨大な市場規模が予測されたとしても、発展段階におけるエンジニアと潜在的なユーザーによる相互作用の欠如は弱点であり、今まで多くの製品が経済的なブレークスルーに至っていない。従って、本研究の目的は、技術開発を社会状況に統合することによってソーシャル・イノベーションに焦点を当てた進行中のプロジェクトである(Monse and Weyer 1998: 98)。技術発展を社会状況に統合するということは、例えば設計中の(潜在的な)ユーザーのフィードバックを考慮すること、また、新しい技術開発を始める前に目標グループの要求を検証することである。様々な問題が明らかであるにも関わらず、パロというシールロボットのような老人介護の分野における日本のロボット開発は国立総合研究所での調整の下行われ、世界中で大人気となった。筑波大学・山海義之教授の人間装着型ロボットスーツ「HAL」もまた、つくばモビリティロボット実験特区で考査され、つくば国際戦略総合特区の協調的な枠組みで発展を続け、今日世界中から注目と賞賛を得た(Rabe and Kohlbacher 2015)。認知症患者に対するパロの優れた治療効果も(Kawaguchi et al. 2009)、HALで練習しながら部分的に麻痺した患者はその可動性の一部を取り戻せる効果も (Hartmann 2014)、HALから派生したパワーアシストスーツを利用し、介護や空港などのような人や重い物を繰り返し持ち上げが必要な仕事の労働条件の改善する効果も(Asahi Shimbun Digital 2016)、政策によって確立された支援的イノベーション環境の成功例である。それでも、このような技術はユーザーにとって付加価値をもたらしても、主に価格の高さのために市場に予想される範囲には浸透することが難しい。さらに、例えばパロの場合、および老齢介護と育児のためのロボテクでは、人間と感情の表現をシミュレートする機械と人間のような行動との相互作用の中に含まれる欺瞞に疑問を呈する倫理的懸念が徐々に増加している(Sharkey and Sharkey 2011, 2012; Sparrow 2015; Sparrow and Sparrow 2006; Gatterer et al. 2015)。同様の不安は、ロボットスーツの例に見られるような技術の利用によってもたらされる人間の機能強化の場合にもある。
実績
Shire, Karen; Rabe, Benjamin and Vitali Heidt (September 2016):Social innovations with robotics in eldercare in Japan and Germany. Presentation given at: Japanese and German Cutting Edge Technologies for Patient Care. First NRW-Fukushima Joint Symposium on Advances in Medicine, Essen.
Rabe, Benjamin and Martin Rathmann (October 2016):
Ready for the Robot Revolution – Japan's Attempts to Solve Societal Issues by the Implementation of Advanced Robotics.
Presentation given at: Third International Conference on Universal Village 2016, Nagoya.
Rabe, Benjamin (November 2016):
The Institutional Impact of Japan’s New Robot Strategy: Technology Development in Regional Systems of Innovation.
Presentation given at: German Association for Social Science Research on Japan (VSJF) Annual Meeting 2016 – Mobility and the City of the Future - Section Meeting Technology, Duisburg.
論文
Heidt, Vitali and Benjamin Rabe (forthcoming):Japans Altenpflege: Einblicke und Ausblicke in den Pflegealltag und die Technologienutzung
Kohlbacher, Florian and Benjamin Rabe (2015):
'Leading the way into the future: The development of a (lead) market for care robotics in Japan.' In: Junmo, Kim (Ed.) (2015): International Journal of Technology, Policy and Management – Special Issue on: “Aging Society and the Changing Industrial Landscape.“
Rabe, Benjamin and Florian Kohlbacher (2015):
Pflegerobotik als Innovationstechnik in alternden Gesellschaften – Eine Analyse der Einflussfaktoren auf die Entstehung eines Lead-Markets in Japan. In Asiatische Studien - Études Asiatiques 69 (2), De Gruyter, pp.321-358.
Kohlbacher, Florian and Benjamin Rabe (2015):
A FUTURE WITH CARE ROBOTICS. In: The Magazine of the British Chamber of Commerce in Japan, (Exclusive E-Bulletin Content). Online: http://bccjacumen.com/features/e-bulletin-exclusive/2015/01/a-future-with-care-robotics/, last accessed 02/14/2015.
賞歴
最優秀論文賞 (名古屋大学、Third International Conference on Universal Village 2016):Rabe, Benjamin and Martin Rathmann (平成28年10月):
Ready for the Robot Revolution – Japan's Attempts to Solve Societal Issues by the Implementation of Advanced Robotics.