- 2017-04-25 21:44:09
佐倉研OBの川野です。
この3月に修士論文を執筆・提出し、4月からは一般企業にて新人研修の日々を送っています。
半月ほど遅れてしまいましたが、佐倉研の最後のお題である「佐倉研での修士2年間を振り返って」を、この場を借りて記したいと思います。
とは言ったものの、「ぼくは修論で何を成そうとしたか?」については修論のあとがきにて、「結局、到達点はどこだったか?」は自分のfacebookにてその一端を書いたので、ここに何を書いたらいいやら正直迷いました。
色々考えた末、佐倉研に興味があって学際情報学府を受験したい方の参考にもなるよう、「ぼくが佐倉研という場で何を学んだのか?」を書くことにします。
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では、ぼくが佐倉研で学んだことは何なのか。
一言で言えば「研究のおもしろさをと向き合う」ということでしょうか。
(ここでの「研究」は、研究するという行為というより、研究内容の話だと思ってください。)
佐倉研メンバーは「知識と社会のよりよい関わり方を考えたい」という点でのみ感性が共通しているけれど、実際にやっていることは、テーマも手法も依拠する領域も千差万別です。
ぼく自身は『風評被害』をテーマに修論を執筆し、論文では主に災害情報論、リスク認知、うわさ・ニュース伝播研究、社会心理学、計量テキスト分析などの研究領域・手法に依拠していました。が、このあたりのトピックはほとんど、佐倉研メンバーの誰とも被っていません。
だからこそ、細かな理論や手法の前段階にある、「あなたの研究のおもしろさは何か?」という根本部分を根本から問いかけてくる、そんな研究指導が常日頃から行われている研究室でした。
だからこそ、当たり前だけど「誰が聞いてもおもしろさが伝わる研究」をすることが、佐倉研で研究するうえでは特に重視されてきたと思っています。
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とはいえ「誰が聞いてもおもしろさが伝わる研究」と簡単に言っても、実際にかたちにするのは非常に難しく。
幸いにして、佐倉研は、ジャングルのように(テーマ・手法的に)魑魅魍魎が跋扈する学際情報学府のなかでもとりわけ多様性に富んでいる、生存戦略上とっても賢い研究室です。
ですので佐倉研に否が応でも身を置くと、様々な研究での「おもしろさの伝え方」に浴びるように接することができました。
そんな佐倉研での2年間を振り返って「これかな」と思い至った、研究のおもしろさを伝える方法。
それは、自分が研究を進めていくうえでぶつかって悩みながら選んだ選択の一つ一つに対して、「なぜ、BでなくAを選んだのか」に丁寧に答えを示し続けることです。
ぼくの例で言えば、
なぜ、(他の現象でなく)『風評被害』という研究対象を選んだのか。
なぜ、(他の研究領域でなく)リスク認知研究の観点に依拠したのか。
なぜ、(他のデータでなく)新聞報道を分析対象にしたのか。 などなど。
これらの選択の一つ一つで、「先行研究で実施されてないから」といった消極的理由だけでなく、より積極的な理由を主張していくことが、研究の面白さを他の人に伝える、ということだと考えます。
自分以外の研究についても「なぜ、BでなくAを選んだのか」を意識するようになって、その人が何をおもしろいと思って研究しているのか、大学院に入った当初と比べると格段に理解できるようになってきました。これは、テーマや手法に限らず、だいたいどんな研究に対しても当てはまります。
そうは言っても、自分の選択を模索して足踏みしているうちに、修論の締め切りは刻一刻と近づいてくるもので。「本当にやりたい研究」よりも、「少しズレるけど確実にできる研究」に妥協してしまいそうな瞬間が、この2年間で数え切れないほどにありました。
研究が楽な脇道に逸れそうなとき、佐倉先生や佐倉研メンバーのみなさんからは、ある時は優しく、ある時はもっと優しく、本当にやりたい研究の道へと引き戻してくれる、そんなアドバイスを幾度となくいただきました。
だからこそ、迷ったら自分の胸に手を当てて、自分が本当にやりたい研究のための選択ができているのか、ということを絶えず意識することができました。
みなさん、ぼく自身よりもぼくの本当にやりたい研究を把握されていたのではないかと感じられ、本当に頭が下がる思いです。
後になって考えると、「やりたい研究」からズレた研究は選択のどこかに消極性や妥協が見え隠れしていた気もします。なので、きっと今なら「その人の本当にやりたい研究を本人以上に把握する」という神業の2%くらいは真似できるかもしれません。
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ところで、学際情報学府で貰える「修士(学際情報学)」って謎ですよね。
学位記授与式を終えて「ぼくが修士2年間で学を修めたはずの『学際情報』ってなんだ?」を考えてみたとき、結局、ぼくにできるようになったのは、テーマ・手法によらず「研究のおもしろさはどこにあるか?」を考える癖が身についたことくらいでした。
でも、これは佐倉研のメインテーマである科学コミュニケーションだけでなく、異なる学問分野の間(まさに学際!)で対話をするうえでは、すっごくすっごく大事なことのはずです。
自分の研究のおもしろさを伝えること。誰かの研究のおもしろさを理解すること。
これが佐倉研の修士2年間で修めた『学際情報』なるものの正体です。
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長くなってしまいましたが、佐倉先生をはじめ、佐倉研メンバーのみなさんには2年間たいへんお世話になりました。
ひとまず佐倉研を離れることにはなりましたが、佐倉研メンバーのみなさんとの縁が終わったわけでは決して無いので、引き続きご指導のほどよろしくお願い致します。
さしあたっては佐倉先生にカタンで勝たねばなりません。
そして、これから佐倉研(あるいは学際情報学府、あるいは他のどこか)で研究をするみなさんには、ぜひぜひ「おもしろい研究」に取り組んでいただきたいです。
もしよかったら、みなさんの研究のこと、ぼくにもこっそり教えてくださいね。
この3月に修士論文を執筆・提出し、4月からは一般企業にて新人研修の日々を送っています。
半月ほど遅れてしまいましたが、佐倉研の最後のお題である「佐倉研での修士2年間を振り返って」を、この場を借りて記したいと思います。
とは言ったものの、「ぼくは修論で何を成そうとしたか?」については修論のあとがきにて、「結局、到達点はどこだったか?」は自分のfacebookにてその一端を書いたので、ここに何を書いたらいいやら正直迷いました。
色々考えた末、佐倉研に興味があって学際情報学府を受験したい方の参考にもなるよう、「ぼくが佐倉研という場で何を学んだのか?」を書くことにします。
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では、ぼくが佐倉研で学んだことは何なのか。
一言で言えば「研究のおもしろさをと向き合う」ということでしょうか。
(ここでの「研究」は、研究するという行為というより、研究内容の話だと思ってください。)
佐倉研メンバーは「知識と社会のよりよい関わり方を考えたい」という点でのみ感性が共通しているけれど、実際にやっていることは、テーマも手法も依拠する領域も千差万別です。
ぼく自身は『風評被害』をテーマに修論を執筆し、論文では主に災害情報論、リスク認知、うわさ・ニュース伝播研究、社会心理学、計量テキスト分析などの研究領域・手法に依拠していました。が、このあたりのトピックはほとんど、佐倉研メンバーの誰とも被っていません。
だからこそ、細かな理論や手法の前段階にある、「あなたの研究のおもしろさは何か?」という根本部分を根本から問いかけてくる、そんな研究指導が常日頃から行われている研究室でした。
だからこそ、当たり前だけど「誰が聞いてもおもしろさが伝わる研究」をすることが、佐倉研で研究するうえでは特に重視されてきたと思っています。
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とはいえ「誰が聞いてもおもしろさが伝わる研究」と簡単に言っても、実際にかたちにするのは非常に難しく。
幸いにして、佐倉研は、ジャングルのように(テーマ・手法的に)魑魅魍魎が跋扈する学際情報学府のなかでもとりわけ多様性に富んでいる、生存戦略上とっても賢い研究室です。
ですので佐倉研に否が応でも身を置くと、様々な研究での「おもしろさの伝え方」に浴びるように接することができました。
そんな佐倉研での2年間を振り返って「これかな」と思い至った、研究のおもしろさを伝える方法。
それは、自分が研究を進めていくうえでぶつかって悩みながら選んだ選択の一つ一つに対して、「なぜ、BでなくAを選んだのか」に丁寧に答えを示し続けることです。
ぼくの例で言えば、
なぜ、(他の現象でなく)『風評被害』という研究対象を選んだのか。
なぜ、(他の研究領域でなく)リスク認知研究の観点に依拠したのか。
なぜ、(他のデータでなく)新聞報道を分析対象にしたのか。 などなど。
これらの選択の一つ一つで、「先行研究で実施されてないから」といった消極的理由だけでなく、より積極的な理由を主張していくことが、研究の面白さを他の人に伝える、ということだと考えます。
自分以外の研究についても「なぜ、BでなくAを選んだのか」を意識するようになって、その人が何をおもしろいと思って研究しているのか、大学院に入った当初と比べると格段に理解できるようになってきました。これは、テーマや手法に限らず、だいたいどんな研究に対しても当てはまります。
そうは言っても、自分の選択を模索して足踏みしているうちに、修論の締め切りは刻一刻と近づいてくるもので。「本当にやりたい研究」よりも、「少しズレるけど確実にできる研究」に妥協してしまいそうな瞬間が、この2年間で数え切れないほどにありました。
研究が楽な脇道に逸れそうなとき、佐倉先生や佐倉研メンバーのみなさんからは、ある時は優しく、ある時はもっと優しく、本当にやりたい研究の道へと引き戻してくれる、そんなアドバイスを幾度となくいただきました。
だからこそ、迷ったら自分の胸に手を当てて、自分が本当にやりたい研究のための選択ができているのか、ということを絶えず意識することができました。
みなさん、ぼく自身よりもぼくの本当にやりたい研究を把握されていたのではないかと感じられ、本当に頭が下がる思いです。
後になって考えると、「やりたい研究」からズレた研究は選択のどこかに消極性や妥協が見え隠れしていた気もします。なので、きっと今なら「その人の本当にやりたい研究を本人以上に把握する」という神業の2%くらいは真似できるかもしれません。
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ところで、学際情報学府で貰える「修士(学際情報学)」って謎ですよね。
学位記授与式を終えて「ぼくが修士2年間で学を修めたはずの『学際情報』ってなんだ?」を考えてみたとき、結局、ぼくにできるようになったのは、テーマ・手法によらず「研究のおもしろさはどこにあるか?」を考える癖が身についたことくらいでした。
でも、これは佐倉研のメインテーマである科学コミュニケーションだけでなく、異なる学問分野の間(まさに学際!)で対話をするうえでは、すっごくすっごく大事なことのはずです。
自分の研究のおもしろさを伝えること。誰かの研究のおもしろさを理解すること。
これが佐倉研の修士2年間で修めた『学際情報』なるものの正体です。
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長くなってしまいましたが、佐倉先生をはじめ、佐倉研メンバーのみなさんには2年間たいへんお世話になりました。
ひとまず佐倉研を離れることにはなりましたが、佐倉研メンバーのみなさんとの縁が終わったわけでは決して無いので、引き続きご指導のほどよろしくお願い致します。
さしあたっては佐倉先生にカタンで勝たねばなりません。
そして、これから佐倉研(あるいは学際情報学府、あるいは他のどこか)で研究をするみなさんには、ぜひぜひ「おもしろい研究」に取り組んでいただきたいです。
もしよかったら、みなさんの研究のこと、ぼくにもこっそり教えてくださいね。
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