猪口 智広

  • 2016-09-13 23:58:05
博士課程

自己紹介

動物や機械といったヒト以外の存在にわたしたちが向ける親密性に関心を持ったのが研究の出発点です。学部では社会学を学びながら、動物性愛や家族としてのペットなどを考察の対象にしてきました。一見素朴すぎるかにもみえるイヌへの愛や擬人化を表明しつつも、背景に「人間」概念や二分法思考への鋭い批判を併せ持つハラウェイの思想に惹かれ、現在の研究に至っています。
実はこれまでほとんど生身の動物を飼えたことがなく、代わりに触れてきた「表象としての動物」をどう考えるか、あるいはそれらとの関わりをどう見ていくかというところも、もう一つ研究関心として抱いているところです。

趣味は囲碁と、ときどき手芸。

研究概要

研究テーマ:ダナ・ハラウェイの思想における「人間」批判――(非)人間の共生と連帯へ
「自然/文化」の二分法批判を中心に展開されてきたハラウェイの議論では近年、「伴侶種(companion species)」という独自の概念が中心的な役割を担うようになっている。この概念は犬と人の関係をめぐる議論において提示されたものであるが、伴侶動物のみならず人類を含む様々な種類の動植物や無機物をも指し示すものであり、さらに異種間関係論にとどまらず主体概念の再考をも志向するものである。
本研究ではこうした伴侶種論の多面性を、生物学史研究やフェミニズム理論という形で展開されてきたこれまでのハラウェイの思想との関連を踏まえて分析し、その意義と課題を提示することを目指す。人間例外主義的二分法を退けながら現実世界における個別の問題解決を志向する点において、伴侶種論はアニマル・スタディーズの系譜に倫理学的転回をもたらしたが、同時にそれは「サイボーグ宣言」(1985)以来の、同一性(identity)ではなく親和性(affinity)による連帯構築の志向を引き継ぐものである。人が様々な他者と結ぶ様々な関係の問題解決にこうした議論が果たしうる役割を考察することは、「ポストヒューマン(posthuman)」「ポスト人文学(posthumanities)」「人新世(anthropocene)」といった概念をめぐる近年の思想的潮流を考える上でも意義あるものである。

経歴

2016- 日本学術振興会特別研究員(DC1)
2016- 東京大学大学院学際情報学府学際情報学専攻博士後期課程
2014-2016 東京大学大学院学際情報学府学際情報学専攻修士課程(修士(学際情報学))
2011-2014 東京大学大学院情報学環教育部研究生(修了)
2011-2014 東京大学文学部行動文化学科社会学専修課程(学士(文学))
2009-2011 東京大学教養学部前期課程文科三類

論文

  • 猪口智広,2016,「ダナ・ハラウェイの『宣言』における混淆概念の研究――『サイボーグ』と『伴侶種』」東京大学学際情報学府2015年度修士論文 .
  • 猪口智広・岡崎佑大,2012,「自発的な防災活動はなされているか」,『人口減少時代の地域づくりⅢ―― ソーシャル・キャピタルの観点から 2011年度社会調査実習報告書』東京大学人文社会系研究科・文学部 社会学研究室,68–73.

記事

  • 猪口智広,2013,「キャラクターとしての動物表象――ケモナーとファーリー・ファン」,『ヒトと動物の関係学会誌』第33号,74–76.

学会発表

口頭発表
  • 猪口智広,2016,「ダナ・ハラウェイの伴侶種論における技術」科学技術社会論学会第15回年次研究大会(2016年11月6日 於 北海道大学札幌キャンパス)
  • Inokuchi, T., 2016, “From Cyborgs to Companion Species: Affinity and Solidarity in Donna Haraway’s Feminist Theory” 10th International Conference on Applied Ethics (Oct 28, 2016 at Hokkaido University)
  • 猪口智広,2016,「ダナ・ハラウェイの「伴侶種」論の研究――愛と家畜化を中心として」ヒトと動物の関係学会第22回学術大会(2016年3月6日 於 東京大学弥生キャンパス).
  • 猪口智広,2015,「ダナ・ハラウェイの『伴侶種』における科学技術観」科学社会学会第4回年次大会(2015年10月11日 於 東京大学本郷キャンパス).
  • 猪口智広,2015,「ダナ・ハラウェイの『伴侶種』倫理の考察――共生と混淆の存在論に着目して」日本倫理学会第66回大会(2015年10月4日 於 熊本大学黒髪北キャンパス).


所属学会

  • ヒトと動物の関係学会
  • 日本倫理学会
  • 科学技術社会論学会
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