研究室必読図書

  • 2014-02-03 23:14:28
原則としてM1対象ですが、M2以上の学生も役に立つので是非読んでください。特に方法論は必読。(作成:佐倉統/作成協力:渡辺義弘)

【目次】
→0. 方法論──戦うための武器を身につける
→1.基本枠組み──視点を涵養し、足腰を鍛える
→2. 基礎学力を身につける──少し教科書的なやつ
→3.余裕があれば読んでみたい一冊

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0. 方法論──戦うための武器を身につける

ウヴェ・フリック『質的研究入門──「人間の科学」のための方法論』春秋社
質的な方法論について一通り押さえられている。社会情報研究法I(花田&林)の必読文献。

木下是雄『理科系の作文技術』中公新書
昔の本だけど、論文執筆技術のマニュアルとしては今でもピカイチ。類書では酒井聡樹『これから論文を書く若者のために』(共立出版)もおすすめ。

佐藤郁哉『フィールドワーク──書を持って街へ出よう』新曜社
理論と実践、机上と現場、どちらも大事。どのようにバランスを取るか。まずは一読。

1.基本枠組み──視点を涵養し、足腰を鍛える

1-1. 「関係」あるいは「文脈」について

A. バラバシ『新ネットワーク思考──世界のしくみを読み解く』NHK出版
「ツナガル」ということはどういうことか?その効果とはどういうものか?なぜツナガルことは不平等を実現するのか?・・・ネットワークという言葉を使うな ら最低限は知っておかなければいけないベキ法則などをわかりやすく解説している。最新のネットワーク理論で自然界、ビジネス界、医学界、人間界の現象を解 説して衝撃を与えた本でもあり、読み物としてもたいへん面白い。反論はこちら:D. ワッツ『スモールワールド・ネットワーク』(阪急コミュニケーションズ)。

D.R. ホフスタッター『ゲーデル、エッシャー、バッハ』白揚社
AIにこと寄せつつ、「人間が何かを理解する、分かるとはどういうことか」を真面目に、かつおもしろく語ってくれる名著。

M. ポランニー『暗黙知の次元』ちくま学芸文庫
むしろ古典ですが、曖昧模糊としたものと理路整然としたものとの関係について語るには、欠かせない一冊。

Bo Dahlbom (ed.), Dennett and His Critics. Blackwell, 1995.
自然主義科学哲学者ダニエル・デネットの思想について、一線の研究者が寄稿した論文集。

1-2. 「歴史」と「進化」について

ドーキンス『利己的な遺伝子』紀伊国屋書店
生物の進化については、これがいちばん分かりやすくて良い本。ただ、くれぐれも、これで進化のすべてが分かった気にはならないように。

ジャレド・ダイアモンド『銃・病原菌・鉄』草思社
生物としてのヒトの進化と、文化的存在としての人間の歴史とを、環境への適応を媒介変数として結びつけようという意欲的な試み。

R.H. フランク『オデッセウスの鎖―適応プログラムとしての感情』サイエンス社
進化心理学の良書。感情的は適応的?

A. Grafen (ed.) Evolution and Its Influence. Clarendon Press, 1989.
絵画の進化、社会の進化など、さまざまな領域での「進化」概念の実際。

1-3. 「社会」と「都市」について

田中克彦『ことばと国家』岩波新書
言語が統治権力とどのような関係にあるのか、また、人は言語とどのように付き合っていくべきなのか、深く考えさせられる名著。

B. ルドフスキー『建築家なしの建築』鹿島出版会
建築も都市も、人間という生物が環境に適応するための手段。その視点から、建築の原点を見直す痛快なカタログ的名著。

コールハース『錯乱のニューヨーク』ちくま学芸文庫
人間にとって都市とは何なのか? 人間と都市の関係は、いかなるものなのか? そして、そもそも都市とは何なのか? これも名著。

1-4. 「科学」について

H.ポアンカレ『科学の価値』、『科学と仮説』ともに岩波文庫
科学とは何かを考える上で欠かせない古典2冊。さすがに古くなったところもあるが、基本的な考えかたは、今なお通用するし、むしろ重要ですらある。

寺田寅彦『柿の種』岩波文庫
日本の元祖・複雑系&リビング・サイエンティスト。なおかつ、文理越境を実践していた人。時代が良かったのか、寺田の才能なのか。しかし彼も、学者としては辛い立場にあったようだ。

D. A. Dewsbury (ed.) Studying Animal Behavior: Autobiographies of the Founders. University of Chicago Press, 1989.
動物行動学の創成者たちの自伝。どれも短くて読みやすい。パイオニアというのは、どの分野でも大変だったということが良く分かる。

J. Brockman (ed.) Third Culture: Beyond the Scientific Revolution. Touchstone, 1996.
日本の元祖・複雑系&リビング・サイエンティスト。なおかつ、文理越境を実践していた人。時代が良かったのか、寺田の才能なのか。しかし彼も、学者としては辛い立場にあったようだ。

1-5. 生命と環境について

レイチェル・カーソン『沈黙の春』新潮文庫
古典的名著。科学的な思考を突き詰めると詩的にも美しくなる例として、佐倉のお気に入りのひとつです。

モノー『偶然と必然』みすず書房
生命とは何か、分子生物学の視点を徹底して考えた古典。今となっては知識や視点は古いが、一読に値する。

佐倉統『現代思想としての環境問題』中公新書
これも一応読んでくださいませ。デビュー作です。

J. Weiner (ed.) The Best American Science and Nature Writing 2005. Houghton Mifflin, 2005.
英語圏の科学者たちの書いたエッセイ集。みなさんはここからどんな感想を持ちますか?

2. 基礎学力を身につける──少し教科書的なやつ

末田清子・福田 浩子『コミュニケーション学―─その展望と視点』松柏社
コミュニケーションをめぐる研究領域、学説を網羅的に紹介している。この分野ではめずらしく体系的な入門書。もちろん不十分なところもあるが、コミュニケーションという言葉を使うならここに書かれてある議論は最低限しっておくべき。

長谷川寿一・長谷川眞理子『進化心理学入門』東京大学出版会
進化心理学の定番教科書。

ワールドロップ『複雑系』新潮文庫
複雑系の科学についての、読みやすい入門書。もっと本格的な教科書が必要な場合は御相談ください。

アイリック・ニュート『世界のたね』日本放送出版協会
科学史の本ですが、中学生でも読める内容でありながら、人間にとって科学とは何か、その本質をずばりと語る。

中島尚正・原島博・佐倉統『総合情報学』放送大学教育振興会
試供品の一覧みたいな内容だが、入り口としては便利。

S. E. Cozzens and T. F. Gieryn: Theories of Science in Society. Indiana Univ Press 1990.

3.余裕があれば読んでみたい一冊

3-1. その1──比較的新しい作品

H. ラインゴールド『スマートモブズ』NHK出版
携帯電話や無線LANなどのモバイル(ユビキタス)コミュニケーションがもたらしている思想、文化、政治、経済への影響と、これからの未来像をえがこうとする一冊。評判システムの構築など予想される未来へのよりよい「仕組み作り」まで言及した未来志向の一冊。

西垣通『デジタル・ナルシス』岩波現代文庫
情報科学者の伝記を西垣流にアレンジした、独特のエッセイ集。科学とは何か、考えさせられる名著。学環の学生なら必読です。

S. ブラックモア『ミーム・マシーンとしての私』草思社
ミーム関連文献も、さすがに一つくらいは入れておきましょう。

3-2. その2──古典(コメント省略)

R.デカルト『方法序説』岩波文庫

M.ヴェーバー『職業としての学問』岩波文庫

K.マルクス『経済学・哲学草稿』岩波文庫

C.ダーウィン『種の起原』岩波文庫

M.ファラデー『ロウソクの科学』

E.von ベルツ『ベルツの日記』岩波文庫

E.H. カー『歴史とは何か』岩波新書
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